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摂食・嚥下の話
摂食・嚥下について 〜『食べる・飲み込む』ことにお困りの方へ〜
1. 「摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)」とは。
2. 「摂食・嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)」とは。
3. 誤嚥(ごえん)と誤嚥性肺炎(ごえんせい はいえん)について
Q&A
Q1. 家庭で出来る安全な嚥下訓練はありますか?
Q2. 食事を介助する時のポイントを教えて下さい。
Q3. ムセにくい(誤嚥しにくい)食べ物はどんなものですか?
Q4. 嚥下障害のため、胃瘻( いろう )をしていて口から食べていないのですが,口腔ケアは必要ですか?
Q5. 家庭で誤嚥に気づく症状はどんなものがありますか?
Q6. 家族が食べ物をノドにつまらせてしまったら、どうしたらいいでしょうか?
Q7. 嚥下障害があったときは何科で診てもらえるのでしょうか?

摂食・嚥下について 〜『食べる・飲み込む』ことにお困りの方へ〜
 1、「摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)」とは。

「摂食」とは「食べること」を指し、「嚥下」とは「飲み込むこと」であり、食物を口の中から食道を通って胃に送り込むことです。
通常私達は、特に意識せずに口に入れた食物を噛んで飲み込んでいますが、その過程は次のようになります。

  • 食物を認知する.
  • 口の中に食物を入れる。
  • 食物を細かく噛み砕き、唾液と混ぜてすりつぶす。
  • 噛み砕いた食物を舌を使って喉(のど)の奥へ送る。
  • 食物が気管に入らないように気管の入り口に蓋をする。
  • 食物を嚥下の瞬間だけ開く食道へと送り込む。
  • 食物を食道から胃へと送る.

喉(のど)は、飲食物の通り道であると同時に空気の通り道(気道)でもあり、両者が交わっているところです。そのため嚥下と呼吸の仕組みの間には、神経や筋肉の複雑な係わり合いが必要なのです。

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 2、「摂食・嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)」とは。

疾病や老化などの様々な原因により、食物を認知し、口の中で噛んで飲み込み、食道を通って胃へ送り込むという一連の流れが障害されている状態を「摂食・嚥下障害」といいます。

*唇の開閉,舌の動き,咀嚼に障害がある場合
   (準備期,口腔期の障害)

  • 食物が口からこぼれる。
  • うまく噛むことができない。
  • 噛んだ食物を飲み込める状態(食塊)にすることが出来ない。
  • 喉へ送り込むことが困難。
などの問題が発生します。

*喉へ送り込まれた食物を上手く飲み込むことが困難な場合
   (咽頭・喉頭の障害)

  • なかなかゴックンができない
  • 喉にひっかかる
  • 飲み込む前や後にむせる
などの症状があります

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 3、誤嚥(ごえん)と誤嚥性肺炎(ごえんせい はいえん)について

誤嚥とは、食物や唾液が気管から肺の方へ侵入する現象をいいます。一般的にお茶などを飲んだときにむせることがありますが、「むせる」ことは、誤嚥した異物を排出しようとする生体の防御反応です。
しかし、気道の感覚が低下していると誤嚥していてもむせないことがあります。それを「むせのない誤嚥(不顕性誤嚥)」といい、誤嚥した物が気道に入りっぱなしになる非常に危険な状態です。むせないからといって必ずしも安心とは云えません。

脳性麻痺の方やご老人は呼吸器疾患(肺炎)で命を落とされることが多くあります。肺炎の原因はいろいろありますが、嚥下障害があると、 口の中の細菌で汚れた唾液や食物を気管へ吸引してしまいます。
それが原因となって起きる肺炎を「誤嚥性肺炎」と呼びます。不顕性誤嚥があったり、体力が弱って咳き込む力が弱かったりすると、咳や痰で自然に誤嚥した物を出すことができないために肺炎になってしまうのです。
特徴的な症状のひとつとして、頻繁に熱が出るといったことが挙げられます。

誤嚥を疑う主な症状

  • むせて食べられない。
  • 食べると声がガラガラになる。
  • 痰の量が増えた。
  • のどに食物残留感がある。
などが重要なサインです。

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Q&A 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部 野原 幹司先生監修
Q1 家庭で出来る安全な嚥下訓練はありますか?
A1 マッサージ、深呼吸、発音訓練が有効です。

(1)マッサージ
 食べ物を上手に飲み込むには、首や口の筋肉がスムースに動くことが必要です。首や口の筋肉に力が入っていなかったり、逆に力が入りすぎていたりすると、上手に飲み込むことができません。筋肉がスムースに動くようにするには、マッサージが有効です。(図表1)

図表1

図表1
マッサージの方法。これは一例です。特に決まった方法はありません。痛くないように、とにかく触ること、触ってあげることが大切です。

具体的には、@肩や首のコリをほぐすように、A口唇や頬を伸ばすように、B舌を押すように、指でマッサージするのが有効です。力が入らないところは刺激するように、力が入りすぎているところはほぐすようにマッサージするのがポイントです。このとき温めたタオルなどを用いて、温めてからマッサージするのもいいでしょう。ご自身で出来る方はご自身でしてもいいですが、ご自身で難しい方は介護者の方が行ってあげて下さい。

(2)深呼吸
 飲み込むときには、呼吸とのタイミングがズレないことが必要です。深呼吸が上手に出来ないと、飲み込むときとのタイミングがズレて誤嚥しやすくなります。また,誤嚥をしたときは、誤嚥したものを咳で出す必要がありますが、このときも呼吸が上手に出来ないと効果的な咳が出せません。日頃から姿勢を正して深呼吸が出来るように練習しておくとよいでしょう。

(3)発音訓練
 訓練というよりも「会話」で充分です。話をすることで、口やノド、声帯を動かすことができ、嚥下のためのいい運動になります。もちろん会話には脳も使いますので、認知機能からもいいリハビリテーションになるでしょう。ご家族やご友人とたくさんおしゃべりをして下さい。反対に、脳卒中などで会話が困難な方の場合には、飲み込みの機能も低下しやすくなっています。その分、介助者の方々がマッサージを頑張ってあげて下さい。
 これらの訓練は、すぐにめざましい効果が上がることは少ないですが、続けていくことでジワジワと効果が出ます。継続が力になります。

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Q2 食事を介助する時のポイントを教えて下さい。
A2
 口に入れる量、スプーンの入れ方,飲み込みの確認、食事のペースが重要です。口に入れる量は誤嚥がある方では少なくするのが基本です。一方、なかなか飲み込めない方では、入れる量を多くした方が、嚥下の反射が起きやすくなることがあります。ただ、入れる量を増やすと誤嚥しやすくなるので注意が必要です。
 麻痺(まひ)に左右差があるときは、麻痺の無い方からスプーンを入れるようにして下さい。麻痺がある側は、食べ物を感じたり、まとめたりすることが難しく、誤嚥や溜め込みの原因になります。介助する時は、目線の高さを合わせることも重要です。忙しいからといって介助者が立ったまま上から介助すると、食べるときにアゴが上がって飲み込みにくい姿勢になってしまいます。(図表2)
図表2
図表2
左:良好な介助姿勢.
右:不適切な介助姿勢.目線の高さを合わせると、スプーンの入る角度も良好になり、取り込みの時にアゴが上がらないので安全です。麻痺(まひ)のある方を上にすると、食べ物が麻痺の無い方を流れやすくなってより安全です。

口に食べ物を入れた後、ちゃんと飲み込んでいるかを確認することも重要です。「のどぼとけ」が上がるのを、目で見て、もしくは手で触れて確認して下さい。(図表3)

図表3
図表3
 嚥下の確認方法.のどぼとけ(甲状軟骨)に軽く触れておくと、飲み込んだことが分かります。飲んだときに「のどぼとけ」が指1本分ぐらい挙上します。

注意深く観察をしていると、どれぐらい口に入れれば飲み込みが起こるか、どの食べ物だったら飲み込みまでの時間が早いか、などが分かり、介助の参考になります。
 食事のペースは一般に早すぎることが多いようです。ペースが早すぎると、飲み込む前に次の食べ物が入ってきて上手く飲み込めなかったり、ムセたいのに次の食べ物が入ってきてムセられなかったりして危険です。常に「ペースが早くならないように」と心がけることが大切です。

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Q3 ムセにくい(誤嚥しにくい)食べ物はどんなものですか?
A3

滑りがよく、適度にとろみがついているものがムセにくいといわれます。反対にさらさらした液体(水やお茶)や水分が少ないバラバラと崩れる「きざみ食」は、ムセやすいといわれています。(図表4)

図表4
図表4 誤嚥しやすいものと誤嚥しにくいもの

ムセやすい物のときは、片栗粉などで「あん」をかけると比較的ムセにくくなることが多いようです。とろみをつける「増粘剤」も市販されていますので利用するのもよいでしょう。ただ、増粘剤もいろいろと種類があり、性質も様々ですので専門科の意見を聞いた方が安心です。
味がはっきりしているもの、温度がはっきりしている(冷たいor温かい)ものも上手な飲み込みの運動を引き出すといわれています。また、「好きな物」は上手に飲み込めることが、実際の食事介助で知られていますし、脳の研究でも明らかになっています。もちろん、これらの食べ物が絶対安全というものではありませんので、ご不安なときは専門科に相談されることをお勧めします。

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Q4 嚥下障害のため、胃瘻( いろう)をしていて口から食べていないのですが,口腔ケアは必要ですか?
  ※胃瘻( いろう)とは、おなかの壁と胃の壁を通した小さな穴のことをいい、その穴にチューブを通して直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法です。
A4

誤嚥性肺炎は食べ物を誤嚥してもなりますが、食べ物をとっていなくても、ご自身の「つば」を誤嚥するとなってしまいます。ただ、「つば」を誤嚥している方、全員が肺炎になるわけではありません。口腔ケアをなまけて口の中が汚くなり、むし歯の菌や歯周病の菌を多く含んだ「つば」を誤嚥してしまうと、肺炎になってしまいます。誤嚥のない高齢者では、むし歯や歯周病予防のための口腔ケアが必要ですが、誤嚥がある高齢者では、「つば」をきれいにしておく、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアが必要です。「つば」の誤嚥は睡眠時に多いとされていますので、寝る前の口腔ケアをとくに念入りにするのも効果的です。
 口の汚れの大部分は、食べ物のカスではなく、口の粘膜がはがれ落ちたものや、むし歯菌,歯周病菌といった菌のカタマリです。これらは口から食べ物をとっていなくても、どんどんと増えていきます。口から食べ物をとっていなくても口腔ケアは必須です。(図表5)

図表5
図表5
口から何もとっていない患者さんの口。粘膜のはがれたものや、「つば」が固まったもの、口の細菌などが口中にこびりついています。

一口に口腔ケアといっても、介助者が口の中をきれいにすることはなかなか難しいものです。定期的に歯科に行ったり、歯科に往診してもらったりすると安心です。

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Q5 家庭で誤嚥に気づく症状はどんなものがありますか?
A5

誤嚥に特徴的な症状は「ムセ」です。食事や飲み物をとっているときに、ゲホゲホと咳き込む(ムセる)と誤嚥を疑います。ただ、脳卒中の部位やご病気によっては、ムセない誤嚥(不顕性誤嚥)をすることがあります。この状態は、ムセないために誤嚥に気づかれないことが多く、ひどい誤嚥性肺炎になって初めて気付かれることもあります。不顕性誤嚥に気づくには〔図表6〕のような症状があります。

図表6
図表6

最も分かりやすいのは発熱です。風邪でもないのに熱がでる、2、3日に1回は熱がでる、などは不顕性誤嚥を強く疑います。「体温調節が上手くいかない」というのは誤嚥が原因かもしれません。非常に高齢な方の場合は、熱も出ないことがありますので、日常の微妙な変化に気づいてあげることが大切です。
 誤嚥に気づいたとき、誤嚥を疑うときは専門医を受診して下さい。

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Q6 家族が食べ物をノドにつまらせてしまったら、どうしたらいいでしょうか?
A6

ノドにつまらせることを窒息といいます。窒息は非常に危険な嚥下障害の症状で、年間約7000人の高齢者が食物などをノドにつまらせて亡くなっています。息が止まっているときは、すぐに救急車を呼んで下さい。救急車が来るまで横を向くように寝かせて、出来るだけつまったものを介助者がかき出して下さい。あわててかき出そうとすると食べ物をノドの奥に押し込んでしまうので注意が必要です。何度か窒息をしたことがある方の場合は、いざというときのために吸引器を購入しておくとつまった物を出すときに役立ちます。

ハイムリック法
ハイムリック法
 吸引器が無いときは、ハイムリック法という「後ろから抱えて、みぞおちのあたりを押す」という方法がありますが、完全につまっていないと効果がない、ムリにすると内臓破裂がおこるという報告もありますので、あまり勧められません。何よりも、まず救急車を呼んで下さい。
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Q7 嚥下障害があったときは何科で診てもらえるのでしょうか?
A7

嚥下障害の診療は、一部のリハビリテーション科と耳鼻咽喉科、歯科が担当しています。専門としている病院、診療科は全国でも少ないのが現状です。吹田市では大阪大学歯学部附属病院の顎口腔機能治療部が専門です。

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